近年、LGBTの視点を取り入れた広告を作ろうとする動きは日本でも少しずつ活発になってきています。その際にどういったポイントが成功の鍵になるのかをQuirk’s Marketing Research Reviewがレポートとしてまとめていますので、紹介します。

増加するLGBT消費者へのマーケティング

LGBTへのマーケティングや広告は年々増加している。2013年度米国マーケティング協会の報告によると、LGBT消費者の購買力は8,35億ドルを超えると予測されており、LGBT向けの広告やマーケティングは増加し続けている。LGBT消費者の信頼とロイヤリティを得る為に、効果的なマーケティング戦略を通してコミュニケーションをとることで、LGBTのユニークな特徴を認識するだけでなく、購買力の高い消費者グループのために効果的なマーケティング戦略を反映していく必要がある。

2014年7月、シカゴのマーケティングコンサルティング会社LGBT Research Insightsは、LGBT消費者に対しての効果的なマーケティング方法を編み出すべく、LGBT消費者20人にさまざまなLGBT向け広告を見せ、詳細なインタビューを行った。その結果、LGBT消費者の関心を得られる、いくつかの効果的な要素が明らかになった。

古株と新参者

まず、LGBT視聴者は、広告内でLGBTが認知されていることに対して、とても好意的な態度を見せている。

いくつかのブランドは長年LGBTの広告を行なっており、他は新たなLGBTの広告者だ。LGBT消費者は長年LGBTサポートを確立してきたとして、いくつかの広告会社を認識していた。新しく参加してきた広告者に対しては反応はよくも悪くもなかったが、大半の参加者は、LGBTコミュニティに関心が持ち始めたことを喜ばしく思っていた。

ただし、LGBTに協力的な姿勢だけでなく、ブランドメッセージをしっかりと伝えることも大切(有効)である。LGBTの支持を得たいがためにLGBTを起用しているのでないと伝えるためにも、青年グループやコミュニティセンターのスポンサーシップなど、LGBTコミュニティへ実際に還元することが大切である。

アメリカの金融機関ウェルズ・ファーゴのGLSEN: Gay, Lesbian and Straight Education Network’s (ゲイ、レズビアン、ストレート教育ネットワーク)とのいじめ防止プロジェクトの広告がよい例である。GLSENというLGBTコミュニティによく知られた団体と協力関係を築くことで、ウェルス・ファーゴが近年頻繁に行っているLGBTコミュニティへのサポートが大切なイニシアチブとなっていることをうまく伝えている。

Wells Fargoのいじめ防止プロジェクト

ブランドメッセージとLGBTフレンドリーの共存 

広告者はLGBTへのサポートとブランドメッセージのバランスを考える必要性があると言える。LGBTフレンドリーであるということだけに集中した広告は、「LGBT消費者からの支持を得るためだけに、LGBTを広告に利用している」と捉えられてしまう。

LGBTへの関心とブランド・プロミスの強い繋がりを示すことのできている広告が効果的である。

アメリカ最大手の通信会社であるAT&Tは、紙媒体の広告を通して、LGBTの関心とブランドメッセージとの繋がりを明確にあらわしていると高い評価を受けている。AT&Tの広告は、サービスによって得られる恩恵に焦点をあてながらも、LGBT消費者にとって関心が高い領域(音楽や写真、LGBTの家族やソーシャルネットワーク)についても描写をしている。

製品による恩恵をLGBT消費者に効果的に伝えるためには、LGBT当事者の自然な日々の生活の中で役に立つ事を強調する必要がある。ある回答者は、上記の広告を見ながら「(広告のように)自分も普段から、恋人との写真をFacebookにあげたりしている」とコメントした。

LGBT消費者に対する特別感 

LGBT消費者はLGBTコミュニティを題材にした広告を好むが、広告者がLGBTフレンドリーさを売りたいがためにありきたりなキャッチコピーや有名なLGBT俳優などを用いた広告は好まない。ヒューマン・ライツ・キャンペーンへの支持を僅かに示しただけのレクサスの広告は、LGBT広告としては認識されず、LGBT消費者への効果的な広告にはならなかった。

多くの広告が、ジェンダー・性別の役割や状況に沿ったデザインにされているため、LGBT消費者は、普段使われている題材が、ゲイやレズビアンに置き換えられただけの広告も好まない。例えば、Allstateの地下鉄のホームでゲイカップルが手を繋いで歩いている広告は、初めは良い評価を得た。しかし、まったく同じ構図が男女のカップルにも使われているのがわかると、回答者たちの評価が下がった。

これらの広告とまったく同じ構図のものが、ストレートカップルでも使われていた。

LGBTシンボルの活用 

LGBT消費者は、LGBTに関連した色彩、イメージやシンボルを独創的かつ効果的に利用している広告に対して魅力を感じる傾向にある。特にLGBTを示す色(虹色や虹色の旗)、イメージ(オズの魔法使いのドロシーの靴)やシンボル(ピンクの三角形やアルファ、オメガのジェンダーサイン)などは好意的な反応を得た。LGBTはこのような色、イメージやシンボルに感情的な結びつきを感じている。それらはLGBTアイデンティティには欠かせないもので、ゲイプライドパレードやLGBT文学、また、LGBTフレンドリーな場所や人を伝える大切な役割を果たしている。

LGBTを表す6色の虹 
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ゲイ男性を表すマーク
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元はナチスが同性愛者に装着を義務づけていた。今は権利を表すシンボルとして使われている。
 女性同士のカップルを表すサイン
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LGBTの偽りや偏りのないイメージ 

LGBT当事者の純粋な気持ちの繋がりを描いた広告は、広告者とLGBT消費者との密接な関係を築ける可能性がある。メディアではLGBTに対してネガティブな描写が多いため、親密かつ前向きなLGBT当事者間のコミュニケーションが描かれていると、当事者からは好感を持たれる。LGBT活動家は長年に渡って、LGBTの人々の生活が一般市民と変わらないことを伝えようとしてきた。LGBTの人々の肯定的なイメージは、LGBTコミュニティに対して大きな進歩であるといえる。LGBT消費者への効果的な広告は、直接的に宣伝元のブランドへのポジティブなイメージに繋がっていく。LGBT消費者の偽りや偏りのないイメージを映し出すことで、LGBT消費者とブランドとの間に強い関係を築くことができると言える。

LGBT消費者の「リアルな日々の生活の描写」も高く評価される。LGBT消費者は、特に旅行の広告などで見られる「完璧すぎる服装」や「セレブリティ」など、理想的の高すぎるイメージには否定的だ。また、一般的な広告への批判と同じく、広告に見られる役者たちの年齢層が低すぎることも非難されている。

LGBT消費者は特に、セクシャリティがどのように表現されているかに敏感である。セクシャリティをうまくブランドメッセージに込めて表現している広告は効果的だ。LGBT消費者は、セクシャリティがあくまでLGBTの人々の多様な個性の一部として表現されている広告を好む。LGBTのセクシャリティを好意的に映し出すことで効果的な広告になる。ただし、企業が持つブランドメッセージによっては、セクシャリティを重視した表現も受け入れられる。

例えば、マイアミやラスベガスの旅行関係、アブソルト・ウォッカの広告は、ブランドメッセージとLGBTのセクシャリティのバランスがよい広告として評価を得た。

ゲイの息子と母親の会話

商品名の”CUT”と「無駄なことをするな」というフレーズの”Cut”がかけられている

LGBT団体とスポンサーシップ

LGBT団体の推奨する広告は、更に説得力があるといえる。ヒューマンライツキャンペーン、GLAAD、GLSENやThe Trevor ProjectのようなLGBTを支持する団体と協働している企業の広告は、一時的な利益向上のためでなく、LGBTコミュニティに対して長期的にコミットしているとして安定的な支持を得ている。

LGBTコミュニティでは、これらの団体は広く周知されており、参加者はこれらの団体に強い感情的な繋がりを持っていた。参加者は、広告者がこれらの団体に対し謝礼を支払っていると理解しながらも、こうした広告の方が信憑性が高いと考えている。LGBTをサポートしている団体と協働して広告を出すことでメリットがあることを認知している回答者の中には、こういった広告の少なさに驚いている人々もいた。

また、 LGBTコミュニティへのスポンサーシップも高く評価されている。LGBTコミュニティへのポジティブなインパクトがあるため、LGBT消費者と企業は信頼関係を築くことができる。企業の行なっている効果的なスポンサーシップは、LGBT少年センター、コミュニティーセンター、擁護団体、チャリティなどである。

 SUBARU:LGBT広告の火付け役

LGBT広告の火付け役になったのはSUBARUである。SUBARUの広告は毎回、LGBT消費者の「リアルな日々の生活」の描写やLGBTシンボルの効果的な使い方が評価されている。SUBARUの広告は、「人生を楽しみ、安全な運転で、運転を愛する」というブランドメッセージとLGBTのライフスタイルをうまく繋げることができている。また、SUBARUは長年のLGBTへの支持も評価されている。

Subaru 12

「 (LGBTであることは)選択しているものではない」というアメリカのLGBT啓蒙活動でよく使われるフレーズを扱った広告。

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 ドライバーと用途の多様性を強調した広告。

 LGBT広告を取り巻く最新事情

LGBTに関してのメディアモニタリングを行っているアメリカの団体GLAAD(Gay & Lesbian Alliance Against Defamation)は、先日行われたスーパーボウルでも、コカコーラ、Airbnb、84 Lumberなどの大手企業によってLGBTや移民などの少数派を意識したCMを流されたと報告している

今後、LGBTを意識した広告は、さらに増加すると予想される。

コカコーラのCM:ゲイの父親二人とその娘が登場する

AirbnbのCM:人種や、宗教、性的指向に関係なく「受け入れる」と伝えている