性的指向と性別は自動車の購入動向に影響を与えるか?

アメリカのマリッツリサーチ社の新乗用車消費者研究(NVCS)にて、ジェンダーとセクシャリティが消費決定のプロセスにどのような影響を与えるのかについての調査結果が出ました。近年、自動車のディーラーや関係者がレズビアンとゲイをターゲットにするための戦略を練る必要があると感じており、自動車市場における彼らの消費動向への興味が増してきています。しかし、ゲイとレズビアンの購入動向についての情報が少ないため、今回の調査を実施するに至りました。マリッツリサーチ社は、ゲイやレズビアンの自動車購入動向についての認識のなさから生じた機会損失を踏まえ、2009年から、NVCS(新車消費者研究)に性的指向についての質問を含めました。この調査は、アメリカ人を対象に、製品評価、購入経験、操作性、および人口統計を含む、自動車の消費者動向の多くの側面に焦点を当てています。

こちらの記事では以下の4点に関して言及します:①ゲイ男性、レズビアン女性、ストレート男性、ストレート女性の購入する自動車の地域の割合、②高価格帯の自動車購入率、③セールス・リースと製品そのものへの顧客満足度、④ブランドロイヤリティです。

【結果サマリー 】

・レズビアンはアジア製自動車、ゲイは高級車の購入率が高い

・ジェンダーやセクシャリティは、製品への満足度に関係しない

・ブランドロイヤリティと購入率は比例しない

レズビアン・ゲイは海外製、ストレートはアメリカ製の自動車を好む傾向にある

まず、購入する乗用車の地域とジェンダー・セクシャリティの関連性についての調査結果です。グラフの数字は、それぞれのグループの購入者がアジア・アメリカ・ヨーロッパ製のうちどの自動車を買っているかの割合を表しています。自動車の購入者全体でみると、約半数がアジア製の自動車を購入しています。アメリカ製の自動車が約40%、ヨーロッパ製の自動車が10%という結果になりました。

  • アジア製自動車:52%
  • アメリカ製自動車:38%
  • ヨーロッパ製自動車:10%

全体でみるとアジア製の自動車が人気でしたが、各セクシャリティによって異なる傾向が出ています。

レズビアン−アジア製の自動車が圧倒的な人気を誇る

  • アジア製:70%
  • アメリカ製:20%
  • ヨーロッパ製:11%

ゲイ–ヨーロッパ製自動車の割合が非常に高い

  • アジア製:50%
  • アメリカ製:27%
  • ヨーロッパ製:23%

ストレート女性–全回答者の結果とほぼ同様

  • アジア製:59%
  • アメリカ製:31%
  • ヨーロッパ製:10%

ストレート男性−アメリカ製自動車が人気

  • アジア製:47%
  • アメリカ製:43%
  • ヨーロッパ製:9%

最も高い割合で高級車を購入しているのはゲイ男性

続いて高級自動車の購入率についての調査結果です。ここでの高級車とは、$120,000以上、日本円にして約1200万円以上の自動車を指します。高級自動車はより多くの可処分所得と結びつきやすいので、関心が高まっている領域です。調査結果によると、全回答者の13%が高級車を購入すると回答しました。ゲイの23%という数字は、全回答者の約1.8倍ほどと圧倒的に高級自動車を買う確率が高いことを表しています。ゲイ男性は4つのグループの中で最も高い収入(ストレート男性より平均収入が100万円ほど高い)を得ており、そのことが高級車の購入につながっていると思われます。

高級車の購入率:ゲイの購入率が最も高い

レズビアン 10%
ゲイ 23%
ストレート女性 13%
ストレート男性 13%

回答者:200,000人以上

製品自体への満足度はセクシャリティ・ジェンダーに関わらずほぼ同一

3つ目は、顧客満足度を測る調査です。こちらの調査では、販売・リースなどのサービスと製品自体に非常に満足していると回答している回答者の割合をグラフに表しています。販売・リースの満足度については、他のグループに比べ、レズビアンが最も低い結果となりました。一方で、自動車そのものに対する満足度は各グループごとの差異がほぼなく、セクシャリティや性別に関わらず自動車の購入者の約半数が自動車に対して大変満足しているという結果となりました。

リース・セールスなどの販売経験に対する満足度:レズビアンが最も低い

レズビアン 36%
ゲイ 41%
ストレート女性 45%
ストレート男性 43%

製品自体への満足度:ジェンダー、セクシャリティによる差分がほぼない

レズビアン 49%
ゲイ 49%
ストレート女性 51%
ストレート男性 48%

回答者:200,000人以上

アジア製自動車は総じてロイヤリティが低め

こちらの調査では、ブランドに対する忠誠度(ロイヤリティ)について各グループの嗜好を明らかにしています。ロイヤリティは、現在所有している自動車と同じブランドを次回も購入するかどうかの割合で表しています。アメリカ製自動車に対してもっともロイヤリティの高いグループはストレート男性で、もっとも低いグループはレズビアン女性でした。レズビアン女性は、アジア製自動車の購入率が高いにも関わらず、ロイヤリティは標準程度でした。ゲイ男性は欧州車の購入率が高く、欧州車に対してのロイヤリティも高い結果となりました。

アジア製自動車:レズビアンの購入率は高いにも関わらず、ロイヤリティは標準程度

レズビアン 31%
ゲイ 29%
ストレート女性 29%
ストレート男性 28%

アメリカ製自動車:ロイヤリティはストレート男性が最も高い

レズビアン 36%
ゲイ 43%
ストレート女性 40%
ストレート男性 46%

ヨーロッパ製自動車:購入率の高いゲイがロイヤリティも高水準を維持

レズビアン 27%
ゲイ 36%
ストレート女性 30%
ストレート男性 31%

回答者:200,000人以上

結論

今回の調査結果から、結果の違いの背景にある理由を特定することはできませんでしたが、異なる性別や性的自認によって購入する確率の高い自動車が変わってくる事が分かりました。自動車メーカーや販売店は、セクシャリティ毎に異なるニーズがある事を理解し、”1つの型で全ての顧客に対応する自動車”ではなく、それぞれのニーズに合わせた製品設計を行う必要があるといえます。

【調査概要】
●調査テーマ :「性別と性的指向が自動車の購入動向に与える影響」に関する調査
●調査対象  :アメリカ国内で満20歳以上のモデル車両の購入・リースを行った消費者20万人以上
●調査期間  :2008年8月〜2009年9月
●調査方法  :購入後数ヶ月以内に回答

※この研究では、バイセクシャル、トランスジェンダーについての調査は行われませんでした。
※自動車製造地域のアジア、アメリカ、ヨーロッパの分類については、従来のブランドを採用しています。
(例えば、現在ジャガーはアジアの企業によって所有されていますが、こちらの調査ではヨーロッパ製の自動車として分類されています。)